![]() 九月二十六日 グラウンド・ゼロ (Photo by Mike Rieger/FEMA) |
ビルの残骸の中に、墓標のように立つ鉄骨の十字架が見つかった。現場で作業にあたる消防士らは、誰が決めたというのでもなく、ここを「神の館」と呼んだ。犠牲者およそ二千八百人。一人一人の人生の最後の瞬間がどのようなものだったのか、それらはごくわずかの例を除き、決して語られることはない。テロから五カ月近く立った二月九日、倒壊した北棟のロビー付近のがれきの中から、六人の遺体が見つかった。五人は港湾管理警察の警官、一人は救出用のいすに固定された女性だった。最初に倒壊したのは南棟であることから、北棟にいた警官には退避命令が出ていたと思われる。彼らは最後まで体の不自由な女性を救出しようとしたが、出口からわずか数メートルのところでがれきが六人を飲み込んだ。同ビルには港湾管理警察の事務所があり、テロで三十七人が殉職した。一日で発生した一警察組織の犠牲者としては、米史上最多である。 |