アメリカで使う薬の話
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アメリカで病気になったら
- アメリカでは、よほどのことがない限り医者には行かない、という基本的な姿勢を貫きましょう。理由は簡単、保険が効いてもなお医療費が高いからです。ただ、難しいのは、「よほどのことかどうか」です。そこのところの判断は別にマニュアルがあるわけではないので、自分のからだに相談して決めなければいけません。
- 死にそうなときには、911に電話をして救急車を呼ぶ。そのとき、保険をよく思い出し、救急車を呼んだら五百ドル以上、自腹をきることを考え、その価値があるなら電話します。
- 同じく救急車を呼ぶの場合でも、もし別の大人が家にいるときは、自分の保険がカバーしている病院を探してもらってから救急車を呼び、○○という病院に運んでほしいと指定します。
- 救急車を待つほどでなければ、家の人、あるいは、近所の人に、自分の保険がカバーする病院まで運転していってもらい、救急車を呼ぶ数百ドルを浮かせます。
- 翌日の朝に病院なり診療所なりが開くまで待てるなら、家においてある薬を飲んで耐えます。家に買い置きの薬がなければ、近所のスーパーに行って、痛み止めか解熱剤を買います。
- 基本は、救急車は無料ではない、時間外診療は非常に高い、ことを考えましょう。救急車を呼んで時間外診療を受けたら、最低数万円はかかりますから、よくよく考えてから行動しましょう。
- アメリカで子供に急な発熱があり、病院に電話したら、まず症状は聞かれますが、ほかに症状がなければ、たいていの場合は「ドラッグストアで解熱剤を買ってきて、飲ませなさい」と指示されます。ひどい風邪をひいて診察してもらっても、「咳止めとか解熱剤はドラッグストアで買ってきたものを飲ませておけば大丈夫」といわれ、医者がそのような薬を処方することはまずありえません。医者が処方してくれる薬は特殊な薬に限られ、よほどの重病でない限りドラッグストアで自分が選べる薬で十分だ、というのがこちらの医者の言い分です。日本とアメリカのこの違い、どう思われるでしょうか。
- そして、アメリカの店頭薬はよく効くのです。こんなに効く薬がおいてあるドラッグストアですが、ふつうの商品と同じように陳列してあるのですから、アメリカ人はすいかや卵を買う感覚で薬を買います。買うときには、スイカの熟れ具合をみるのと同様に、包装に書いてある注意書きをみるなり、同様の薬との値段の比較をして、安くて効き目のありそうなものを選ぶのです。そして、二十四時間営業のスーパーならいつでも薬が買えるという大きな安心があります。
- 日本人のアメリカ旅行の「通」は、ドラッグストアで薬をたくさん買っていくそうです。
アメリカの薬事情
- アメリカで病気になって薬を飲むことになったとき、日本との違いに戸惑われた方も多いと思います。そのあたりの日本とアメリカとの違いから説明してみましょう。
- 薬には、医者の処方せんがないと買えないもの(処方薬)(prescription
drug)と自由に薬局で買えるもの(市販薬) (OTC: over the counter drug) とがあるのは、日本でもアメリカでも同じですね。よく誤解されているのですが、薬局で自由に買える薬はあまり効かない薬で、医者に処方せんを書いてもらった薬の方が良く効くとは限りません。薬局で自由に買える薬の中には、長い間処方薬として活躍し、その安全性から(間違って10倍飲んでも死なないとか)市販薬に変更になった優れたものがたくさんあります。
- その良い例が、Acetaminophen、Ibuprofen 、Naproxen Sodium などの頭痛鎮痛薬です。ほら、薬局に行くと、Tyleol とか Advil とか Alieve とかいっぱい並んでいるでしょう。こうした薬は、その優れた効力から、アメリカでは医者に処方せんをもらう代りに、「Tylenol
を薬局で買って飲みなさい。」と言われることもしばしばです。
- でも、日本の医者はまずこんなことは言いません。かるい風邪でも、いろいろな種類の薬を不必要なほどたくさん処方します。今は、日本も医薬分業がいわれて、町医者がその場で薬を売りつけることはさすがになくなりましたが、一応処方せんを書いてくれても、すぐ隣に奥さんの経営する薬局があって、そこで薬を買うことになって、結局薬も医者の収入になってしまうことも少なくありません。こうした違いはどこから来るのでしょう。
- 日本の病院には必ずあって、アメリカの病院にはないものは何だかわかりますか。そうです。病院内の薬局です。薬局の収入は日本の病院のかなりの部分を占めているために、そう簡単にはやめられないのです。日本では、厚生省によって決められている医者の技術料(患者さんを診察して、どんな病気であるかを判断し、適切な治療を考える)が不当に低いために、医者や病院は市販薬で十分な場合でも、処方薬を不必要なほどたくさん患者に売ることで儲けようとします。患者の方も、保険がその代金をカバ−するので、市販薬を自費で買うよりむしろ安く、おかしいとは思わないで単純にたくさん薬をくれるのがいい医者だ、と思い込むのです。
- それに対してアメリカでは、医薬分業が徹底していて、医者が薬の販売にかかわることはできません。医者ができるのは処方せんを書くだけ。その薬をどの薬局で買うかは患者の自由です。病院に薬局はありませんから、街に出て、ドラッグストアなどで薬を買い求めることになります。処方せんを書くことによる医者の収入は多寡が知れていますから、医者は市販薬で十分と判断したら患者にそう勧めます。医者の収入にあまり関係しないからです。
- もう一つの違いは、日本では誰もが何らかの健康保険に入っています。そして薬の値段は厚生省が薬価基準として毎年定め、その値段が健康保険から薬局に支払われます。ですから製薬会社が勝手に薬の値段を決めることはできません。これが日本の医療費の抑制にある程度の役割を果たしていますが、その一方で医者は薬を自由に選ぶことができます。ですから場合によっては医者が不必要に新しくて高い薬を処方することがおこります。
- 一方、アメリカは、医療制度ですら基本的に自由競争社会です。健康保険は民間の保険会社が運営していますし、会社によって保険の条件や料金が違います。会社の健康保険プランにも何種類かあって、その中から自分に適したプランを選べる自由もあります。日本のような薬価基準はいっさいありませんから、製薬会社も薬の値段を自由に決めることができます。
- ただし、アメリカの医療制度の中で大きな力を持っているのは、日本のような医師会ではなく、保険会社です。現在、約70%のアメリカ人は保険会社の運営する
Managed Care Plan に属しているといわれています。あなたも多分そうではないでしょうか。 Managed
Care Plan では、保険会社は病院や医者と、患者を斡旋する代償として、保険会社の定めた料金で患者を診るという契約を結んでいます。医者は保険会社の料金基準は安すぎると思いながらも、患者を回してもらえなくなると困るので、不本意ながら保険会社の料金基準に従うことに同意しているのです。
- 薬も同じです。ある病気に対してどんな薬を使えるかは、医者ではなくて保険会社が決めます。というのは、保険会社は保険で支払うことのできる薬のリストを独自に定め、医者がそのリストにない(新しく、値段の高い)薬を使おうとすると保険でその費用をカバ−することを拒否します。患者は、全額自己負担してでも医者の処方した薬を使うか、医者にもっと安くて保険でカバ−される(保険会社のリストに載っている)薬に変えてもらうか、の選択を迫られます。全体で見れば、この制度が、アメリカの医療費全体の増大に歯止めをかけているといえるでしょう。日本の制度とアメリカの制度のどちらがいいか、簡単には言えないことがおわかりいただけたでしょうか。
- 薬には、ジェネリックと呼ばれるものがあります。薬を開発するには、莫大な費用がかかります。研究の過程で薬になりそうなものが見つかり、動物実験で有望なデ−タが出ても、その7割以上は、開発途中で人に対する毒性が見つかったり、血中濃度が期待ほど上らなかったり、薬効が思ったほどでなかったり、いろいろな理由でつぶれていきます。製薬会社は、こうした無駄になったコストを幸いにも市場に出すことのできた薬に上乗せせざるをえません。こうした莫大な無駄な費用を考えれば、実際の薬を製造する費用など多寡が知れています。薬九層倍、といわれるゆえんです。しかし、そうでもしなければ製薬会社は成り立ちません。
- ところが、薬の特許には期限があります。研究開発がうまくいって、特許を取得して他の会社がまねできないようにしても、実際に薬として発売して利益が出るころには、もう何年か経ってしまっています。特許が切れるまでの残り約5年ほどの間に、製薬会社は必死になって稼がなければなりません。特許が切れてしまったら、誰でも同じものを作って売ることができるようになるからです。その会社は、全く開発費をかけずに製造コストだけで売ることができるのですから、苦労してその薬を開発した会社は、もはや対抗できません。これがジェネリックドラッグです。
- 市販薬にドラッグストアのブランドの薬があるように、処方薬にもジェネリックドラッグがあり、保険会社は支払い費用を抑えるため、薬局にジェネリックドラッグをなるべく使うよう、圧力をかけてきます。薬局はしばしばブランド品を指定した医者に電話し、ジェネリックで代用していいか許可を求めようとします。医者が同意すれば、薬局はブランド品に代わってジェネリックドラッグを売ることができます。この制度は、薬の値段を押さえるためには確かに有効ですが、一方では、製薬会社が多額の費用をかけて薬を開発する意欲をそぐ結果になりかねない面を持っています。
アメリカの頭痛薬
- あなたは頭痛がしたとき、どうしていますか。薬局へ行くといろいろな頭痛薬を売っていますね。どれを飲んだらよいでしょう。アメリカの頭痛薬については、 こちら をご覧ください。
アメリカの風邪薬
- あなたは風邪を引いたとき、どうしていますか。ひどくなければ、まず市販薬を飲もうと思いますね。薬局へ行くといろいろな風邪薬を売っています。どれを飲んだらよいでしょう。アメリカの風邪薬については、 こちら をご覧ください。
アメリカのアレルギーの薬
- あなたはアレルギ−症状を呈したとき、どうしていますか。ひどくなければ、まず市販薬を飲もうと思いますね。薬局へ行くといろいろなアレルギ−の薬を売っています。どれを飲んだらよいでしょう。アメリカのアレルギ−の薬については、 こちら をご覧ください。
薬のことをもっと知ろう
Get The Answers (National Council on Patient Information and Education,1983)
What is the name of the drug and what is it supposed to do?
How and when do I take it - and for how long?
What foods, drinks, other medicines, or activities should Iavoid while taking
this drug?
Are there any side effects, and what do I do if they occur?
Is there any written information available about the drug?
- 専門家に薬のことを説明してもらっても、その場で全部理解して暗記できるものではありません。必要なときに見ることができるように、ちゃんとした薬局ではその薬についての情報をプリントしたものを必ず添付してくれるはずです。もしもらえなければ請求し、それでもだめなら違う薬局を探しましょう。それには、次のような情報が載っているはずです。小さい字で印刷されていますから読みづらいかもしれませんが、大事な情報が書かれていますから必ず読みましょう。
- もしその内容に対する疑問があったら、遠慮なくその薬を求めた薬局の薬剤師に質問しましょう。また、医者に言われたこととの間に食い違いがあったら、医者に質問するのがいいと思います。
- 薬の名前とその作用はなに?
自分の服用する薬の名前と分量、どういう効き目か。単に「血圧の薬を飲んでます」、「糖尿の薬を飲んでます」、「炎症を抑える薬を飲んでます」、… こんな程度の情報なら、情報がないのとほとんど変わりがありません。
- 1日何回? 食後? 食前?
いつまで飲むの?それと、必ず飲み忘れた場合の対応。忘れた分をとばして飲むのか、2回分をいっぺんに飲むのか、ほかの対応が必要なのかは薬の内容や本人の状態によってすべて異なります。
- 食べ物や飲み物との相性は? ほかの薬とののみ合わせなどの注意は?薬の効き目を強くしたり弱くしたりする食べ物。ほかの薬で特に飲みあわせの注意。
- どんな「副作用」があるか?薬にはすべて「副作用」があります。「副作用」のない薬は、文字どおり、毒にも薬にもならないものです。いわゆる「副作用」はしばしばおこるものではありませんが、それがあなたに現れない保証はどこにもありません。また、「副作用」といっても、すぐに中止して対応が必要になるようなものから、さほど気にする必要もないものまでさまざま。必要以上に心配するのも考えものですが、「自分だけは大丈夫」という考えはもっと感心しません。要は、あなたに対して「副作用」が現れるかどうかが問題なのです。「副作用」の「きざし」としてどんな症状があらわれたら心配なのか、その時はどうしたらよいのか、書いてあるでしょうか。
処方された薬の情報を得るには
- 薬の情報を得られるウェブサイトには次のようなものがあります。
- Drug Info Net: ここは無料で薬についての情報が得られます。薬の一般向けの説明というよりリンク集に近く、それぞれの薬についての情報がいろいろな角度から得られます。
- Physicians Desk Reference:もともとは、Physician's Desk Reference という医者のバイブルの様な本で、薬に関する情報が詳しく載っています。医者や専門家向けに書かれたものですが、消費者が見ても役に立つ情報がたくさん載っていますので、他では必要な情報が得られなかったとき、役に立つでしょう。このウェブサイトには、いろいろな病気に関する情報や、薬に関する情報が載っていますが、残念ながら薬に関する部分を見るのは有料で、登録と月$9.95
払わなければいけません。一般の方がそこまでする必要はないでしょう。
- ハイパ−薬事典: これは、日本語の主に日本の医薬品や医療の情報が載っているサイトです。市販薬だけでなく処方薬の情報も、商品名、一般名、医薬品コ−ドなどから検索できます。日本からの市販薬を手に入れたのだけれど、使い方がわからない、というときなどには役に立つと思います。
- メルクマニュアル :もとは、有名なメルク社の薬と病気に関する優れた情報サイトですが、最近メルクと提携関係にある万有製薬が日本語化しました。ですから、日本語ですがアメリカの薬と治療に関する情報が満載されています。
- 薬の知識:
これも、日本語の医薬品や医療の情報が載っているサイトです。各種の疾患に適した薬の紹介や、服用の仕方、適量、副作用などを解りやすく解説しています。ただし、まだテストサ−ビスということで、得られる情報が限られています。
付録: 私と薬
- 何で私がこんな話を書くのか、と思われるかも知れませんね。でも、 私は本来は生化学の研究が本業 で、ふだんは製薬会社で創薬の研究に携わっています。

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