このページは、アメリカ法を勉強しようとしている方に、少しでも多くの情報を提供することを目的として作りました。文中では本語訳を使わずに英語表記をそのまま使っている部分が多々あります。これは無理に日本語に訳して、本来の意味が誤って伝わることを危惧したためです。もし、それらの語をもし存じなかったら遠慮なくご質問ください。用語の説明もHPに載せたいと思います。このHPは、アメリカ法に興味のある方々の情報交換の場ともしたいのでどんどん情報、意見又は質問をお寄せください。IP法に関する情報は「IPサークル(http://www.ipcircle.com)」に載せてあります。Intellectual
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03/13/1999
5. 陪審制度と証拠法
アメリカの裁判規則の中に証拠に関するものがあり、どのような証拠を裁判所が採用できるかが厳しく規定されている。例えば、証拠は争われている事項に関係が無ければならないことはもちろんであるが、その他にその証拠が被告又は原告に対する偏見を導くものであってはならない等規定されている。例えば、ある殺人事件について争われているとしよう。この場合、被告の過去の犯罪歴は原則として提出することができない。今現在争われている殺人事件に関係が無く、そのような証拠は被告に対する偏見を導くからである。
ではなぜこのような細かな規則が必要なのであろうか。それは、アメリカの裁判制度が陪審制を採用していることに理由を求めることができよう。裁判官と違って陪審員は、法律の専門家ではなく一般人である。従って、何もかも証拠として提出されたのではどの証拠を採用すべきかの判断ができない。また、殺人事件の裁判を例に取ってみれば、「無罪の被告を誤って殺人者として評決する」危険性に対して相当の抵抗があるであろうが、もし被告が過去に殺人を犯していれば、悪くいえば、「有罪との評決」が気軽にできよう。そのため、アメリカでは、証拠規則によりどのような証拠を裁判所が採用できるかが決められている。提出された証拠を証拠として採用するか否かの判断は裁判官が行うが、もしその証拠が規則に違反するものであった場合は、提出側と反対側の弁護士が採用拒否(Objection)を裁判官に求めなければならない。一般に、争点に関係のある限り裁判官は証拠を採用する傾向にあるので、Objection(一般には「異議あり」と訳されている)を怠ると非常に不利となり、弁護士としての責任(資質)が問われることになる。
03/09/1999
4. 他訴訟の係属に基づく手続の停止(stay)
同じ争点の2つの訴訟があり、一方が上訴中の場合、他の訴訟について手続の停止を求めることができる。例を挙げてみよう。原告が同じ(A)で被告が違う(XとY)2つの訴訟を想定してみよう。Aが特許権を有しており、Aは特許権を侵害されたとしてXとYをそれぞれ訴えたとする。特許訴訟なので連邦地裁に提訴される。AとXの訴訟が先に判決され、地裁ではAが勝訴したとする。そこで、Xは連邦控訴裁(CAFC)に控訴し、現在係属中だとする。もし、争点が事実問題でなく法律問題なら、AとXの訴訟の結果はAとYの訴訟に大きな影響を及ぼすことが容易に考えられる。そこで、Yは地裁に手続の停止を求めることができる。
しかしながら、争点が、その控訴裁が専権管轄を持つものでない場合は、地裁の管轄権の法律にその決定は委ねられるとされており、その場合は停止をする理由がない。例えば、2つの訴訟が違う州の裁判所で行われており、争点が州法に関する場合である。前記の例の場合は、特許権に関することなのでCAFCが専権管轄を持つ。従って手続の停止を求めることができる。手続の停止を認めるか否かは、裁判所の裁量の範囲である。裁判所が考慮する要素は以下の4つが多くの判決の中で示されている。(例えば、Standard
Javens Prods. v. Gendor Indus., 897 F2d 511, 512 (Fed Cir 1990)やArkansas
Peace Ctr. v. Dep’t of Pollution Control, 992 F2d 145, 147 (8th Cir 1993),
cert denied, 511 US 1017 (1994))
(1) 停止を求める者が控訴裁で争われている争点において優位であろうということをかなりの可能性を持って示しているか否か(但し、確実であることを示す必要はない)
(2) 停止を求める者が、停止がなかった場合修復不可能な損害を被るか否か
(3) 停止した場合、他の当事者が実質的な損害を被るか否か、及び
(4) 停止を認めることが公益に沿っているか
以上の要素を考慮の上、裁判所がその裁量の範囲で停止を認めるか否かが判断される。
03/08/1999
3. 通常の判決(Published;公開)と非公開扱い判決(Unpublished
Disposition)
アメリカの判決文には、通常の判決文と非公開扱い判決文がある。非公開扱い判決文(といっても、何人も見ることができ、もちろん判決データベースで検索も可能である)とは、その判決を先例として引用されたくない場合に出される。アメリカ法は判例法であり、判決が出されればそれが法律となる。しかしながら、その争点に関してはまだ議論が残されている場合、その裁判管轄域(jurisdiction)においてはまだ先例は無いが他の裁判管轄域を見ると判決が割れている場合、現在上級裁や最高裁で争われている場合や最高裁へ裁量上訴が出されており最高裁が受理し審理する可能性が残されている場合等その判決を先例として引用することが望ましくない場合に非公開扱い判決文が出される。しかしながら、先例(precedent)としての効力(star
decisis)は無いが、意見(persuasion)としての効果はある。また、非公開判決は単なる決定の場合(引用する価値の無い場合)にも出される。この場合とは、単に判決を無効として下級審に差し戻す場合等がある。
03/07/1999
2. アメリカの裁判制度-陪審員制度
アメリカの裁判は陪審新制度を採用している。では、何が裁判官によって決定され、何が陪審員によって決定されるのであろうか。簡潔に言えば、法律的事項が裁判官によって決定され、事実事項が陪審によって決定される。例を挙げてみよう。ある契約が、甲と乙の間でなされた。だが実際には、甲が乙を脅迫して契約書にサインした場合を想定してみよう。契約については、一般には州法が適用され、脅迫下(Duressという)で仕方なくなされた場合、その契約は無効とされる。この場合、陪審員が決めるのは、実際に甲が乙を脅迫したかという事実問題である。そして、陪審員が「脅迫があった」と判断した場合、それに基づいて裁判官が法律問題を判断し、その州の法律が脅迫下でなされた契約は無効であると定めていた場合、それを適用して甲乙間の契約を無効とする。だが、場合によっては、事実問題と法律問題が混ざっておりこのようにすっきり行かない場合も多い。
1. Standard of Review(上級裁での審理原則)
上級裁での審理原則には、"de nove," "clearly erroneous standard,"
"arbitrary and capricious standard"及び"substantial evidence
standard" reviews があります。法律問題に関しては"de nove"
reviewが適用され、上級裁は下級裁の判断に全くとらわれずに審理が行えます。一方、事実問題に関しては、
"clearly erroneous standard" reviewが適用され、法律の手続や適用に明らかな間違いがあった場合にのみ下級裁の判断を覆せます。どのような間違いが"clearly
erroneous standard"に該当するかというと、1)法律の誤った解釈、2)判決がsubstantial
evidence(意味のある立証証拠)に支持されていない、3)evidence の重要度の判断ミス(つまり、substantial
evidenceではない証拠を誤って採用し誤った判断を下した場合)があります。
"arbitrary and capricious standard"は、agency(政府の外部機関)や下級裁の判断の審理に適用され、恣意的又は合理的でない行為により事実や法律を適用したり無視したりした場合に判断を覆えせます。"substantial
evidence standard" reviewは、agencyの決定の審理に用いられ、substantialである立証証拠に基づいてagencyが決定した場合、裁判所はその決定を支持しなければなりません。従って、どの審理原則を採用するかによって上級裁が下級裁又はagencyの判決・決定を覆す場合の困難性が変わってきます。