Kenのアメリカ法の散歩道


このページは、アメリカ法を勉強しようとしている方に、少しでも多くの情報を提供することを目的として作りました。文中では本語訳を使わずに英語表記をそのまま使っている部分が多々あります。これは無理に日本語に訳して、本来の意味が誤って伝わることを危惧したためです。もし、それらの語をもし存じなかったら遠慮なくご質問ください。用語の説明もHPに載せたいと思います。このHPは、アメリカ法に興味のある方々の情報交換の場ともしたいのでどんどん情報、意見又は質問をお寄せください。IP法に関する情報は「IPサークル(http://www.ipcircle.com)」に載せてあります。Intellectual Property法に興味のある方は是非ご利用ください。

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  1. Standard of Review(上級裁での審理原則)
  2. アメリカの裁判制度-陪審員制度
  3. 通常の判決(Published;公開)と非公開扱い判決(Unpublished Disposition)
  4. 他訴訟の係属に基づく手続の停止(stay)
  5. 陪審制度と証拠法
  6. アトーニーークライアント秘匿特権
  7. 略式判決(summary judgement)
  8. 裁判官による(bench trialでの)証言の信憑性判断
  9. JMOL(Judgment as a matter of law)
  10. Economic Duress




03/16/2001 更新
10.VKK Corp. v. Nat'l Football League, (99-7876, 03/14/2001, 2nd Cir. 2001)
 経済的強迫(economic duress)による契約の無効が争われた事件である。
 ナショナルフットボールリーグのメンバーであるニューイングランドパトリオットが、経済的理由で、1992年にVKKに売り渡された。その際の契約の中に、ホーム地移動には、ナショナルリーグのメンバーによる承認が必要と書いてあった。VKKは、ホーム地の移転を試みたが、ナショナルリーグのメンバーからの承認が得られなかった。そこで、VKKはその契約は、経済的強迫のもとで行われたのであるから無効であるとの主張をして、1994年に裁判所に提訴した。本件は、NYで争われている事件なのでNY州の法律が適用される。裁判所は、契約の取消や解除を求める者はすぐにそれを要求しなければならず、そうしなかった場合はその契約を追認したとみなされる、として、本件では契約をしてから2年半もたって提訴したので遅すぎるとし、VKKの主張を退けた。なお、裁判所は、6ヶ月も遅れての提訴はその請求を放棄したとみなすとした判決を引用している。


03/15/2001 更新
9.JMOL(Judgment as a matter of law)
 判決の一つに、JMOL(Judgment as a matter of law、陪審の評決と異なる判決)というのがある。これは、陪審が出した評決とは反対の判決をすることである。つまり、陪審の評決が原告に有利なものであった場合は被告に有利な、被告に有利なものであった場合には原告に有利な判決をすることである。
 JMOLを出せるのは、陪審の評決が間違いと言える場合である。つまり、合理的な通常の陪審であればその争点に関してその当事者に有利な評決をする法的に十分な証拠がない、と裁判官が判断した場合にJMOLを出すことができる。Fed. R. Civ. P. 50(a)(1) (JMOL is appropriate when "a party has been fully heard on an issue and there is no legally sufficient basis for a reasonable jury to find for that party on that issue.")。従って、陪審の評決が実質的な証拠によって支持されていない場合又は間違った法的基準に基づいて判断した場合でない限り、JMOLは不適当とされる。
 また、JMOLは陪審の評決が不利である当事者からの申し立てに応答して裁判官が出すことができるが、その当事者はトライアルに入る前に、サマリージャジメントの申し立てをして却下された場合に限られる。


03/09/2001 更新 
8.裁判官による(bench trialでの)証言の信憑性判断
 アメリカの裁判ではよく証言が用いられる。証言を証拠として採用するためにはその信頼性が大きな問題となる。そのため、裁判所での証言がどのような形で証拠となり得るかは証拠法及び裁判手続き規則に細かに規定されている。しかしながら、証人が真実を言っているのか或いは嘘をついているかのを判断する決まった規則はなく、最終的には裁判官又は陪審員の判断となる。
 事件が、事実審理に行って陪審になった場合は、証人の信頼性つまり証言の信憑性は陪審が判断することになる。つまり、証言の矛盾や裁判において示された証人の経歴等の総合的な状況を踏まえ、陪審がその証言を証拠として採用するか否かの判断することになる。
 一方、事件が事実審理にまで行かずサマリージャッジメントが出される状況では、裁判官が証言の信憑性を判断することになる。この場合、裁判官に証言の信頼性の決定に関する大きな裁量権が与えられ、地裁の裁判官が証言の信憑性を決定する。従って、地裁の裁判官の権限は非常に大きなものであり、仮に事件が控訴されたとしても上級裁判所で証言の信憑性そのものを争うことはできない。上級裁判所での判断基準は、地裁の裁判官が明らかな誤りを犯したか、というものであり、「地裁の裁判官が証言を信用した場合に、証人の話が、他の証拠と矛盾しないもっともらしい話しであった場合は、裁判官は明らかな誤りを犯したとは言えない」と最高裁が示している。Anderson v. City of Bessemer City, 470 U.S. 564, 575, 105 S. Ct. 1504, 1512 (1985).


03/07/2001 更新 
7.略式判決(summary judgement)
 アメリカの裁判制度の中には、略式判決(サマリージャッジメント;summary judgment)というのがある。通常の裁判では、まず、原告が訴状を提出し、それに対して被告が応答をする。これらの書面でのやりとりが済んだ後、公判(事実審理)に入る。事実審理においては、一方が陪審による審理を要求する場合は、陪審による審理が行われなければならない。そして、陪審による評決が出され、裁判官が判決を出すことになる。サマリージャッジメントは、陪審による審理(事実審理)の必要が無い場合に裁判官の判断だけにより判決を出すものである。上記したように、陪審は事実審理を行う。従って、事実審理が必要ない場合、つまり、重要な事実に関して争いがない場合("no genuine issue of material fact")にサマリージャッジメントが出される。
 では、特許訴訟の場合について簡単に流れを紹介する。まず、原告が原告の特許を侵害しているとして被告を訴えることになる。これに対して、被告は、非侵害や特許無効の抗弁を行う。Markman判決によって示されたようにクレーム解釈は裁判官が行うことになる。従ってまずMarkman ヒアリングが行われる。つまり、両者がクレーム解釈や特許の無効の論争を行うことになる。クレーム解釈は法律事項であるので裁判官が単独で行える。裁判官は、明細書や出願記録、必要なら専門家の意見を聞いて、クレームの解釈を行う。それと同時に、特許の無効性の判断も行う。しかしながら、特許無効性の判断において事実問題に争いがある場合は、裁判官は単独では判断を行えず事実審理(陪審)にかけなければならない。例えば、on-sale barが問題となり、特許権者は販売していないと主張し一方被告は販売したと主張しており、裁判官の前に出された書類だけでは、「通常の陪審なら必ずこのように判断する」との心証を裁判官がもてず、事実に争いがあると判断された場合である。このような重要な事実に関する争いが無い場合は、裁判官は事件を公判(事実審理)に付すことなくサマリージャッジメントを行うことができる。なお、重要な事実に争いがないことの証明義務は、サマリージャッジメントを要求した者が負う。



2/17 更新
6.アトーニーークライアント秘匿特権
 アトーニーとクライアントの間の連絡(communications)やアトーニーが作成した書類(work products)には、アトーニーークライアント秘匿特権があり、通常は開示義務を避けることができるため、外部に出ることを防げることが可能である。しかしながら、アトーニーークライアント秘匿特権が適用されず、裁判所の命令等により、書類を開示しなければならない場合がある。開示しなければならない場合とは、クライアントが秘匿特権を放棄した場合や秘匿特権で保護されない場合である。そこでどのような場合に、秘匿特権が適用されず書類を開示しなければならなくなるか、を簡単にまとめてみた。
a. クライアントによる秘匿特権の放棄ここで一番重要なことは、クライアントのみが秘匿特権を放棄することができるのであって、アトーニーが秘匿特権を放棄することはできない。従って、アトーニーの行為が秘匿特権の放棄をもたらすことはない。
 秘匿特権はクライアントとアトーニーの間に認められている。従って、クライアントが第三者にアトーニーとの連絡内容やアトーニーが作成した書類を開示した場合は秘匿特権の放棄とみなされる。秘匿特権の放棄について実際に争いとなるのは、クライアントが開示した相手が「第三者」に該当する否かという点であり、ケースバイケースで判断される。
b. 保護されるのは、連絡(communications)のみ
 秘匿特権で保護されるのは、クライアントーアトーニー間の連絡のみであって、クライアントによってアトーニーに開示された事実(underlying facts)は保護されない(Upjohn Co. v. United States, 449 U.S. 383, 395 (1981))。従って、アトーニーの判断に用いられる事実(underlying facts)をクライアントが第三者に開示してもそれは秘匿特権の放棄には該当しない(United States v. EL Paso Co, 682 F.2d 530, 538 n.10 (5th Cir.))。
c. 具体的な例
 クライアントがアトーニーのアドバイスを信用し、それを第三者に開示した場合は、秘匿特権が放棄されたと見なされる。例えば、他社との合併をしようとしておりそのため財務及び税務に関するアドバイスをアトーニーからもらい、それを合併先の会社にみせたとする。これは秘匿特権の放棄にあたる(In re Pioneer Hi-Bred Int'l, Inc., (No. 661, 02/05, 2001 Fed. Cir. 2001)。
 また、特許侵害で訴えられそして特許権者が故意侵害を主張した場合で、アトーニーから特許無効(又は非侵害)との鑑定を取っておりそれを信用して行動した、と主張して反論した場合は、秘匿特権の放棄につながる。
d. 放棄されるのはクライアントが第三者に開示したアトーニーからのアドバイスに関するものだけ
 秘匿特権の放棄の範囲は、開示したアトーニーからのアドバイスの基となった全ての書類、そのアドバイスをするためにアトーニーが考慮した全ての書類、及びそのアドバイスについてなされた議論を反映している同時に存在した書類である(United States v. Cote, 456 F.2d 142 (8th Cir. 1972))。従って、あるアトーニーからのあるアドバイスが秘匿特権の放棄とみなされたとしても、そのアトーニーからの全てのアドバイス(仮に、それらのアドバイスを同時にもらったとしても)について秘匿特権が放棄されたことにはならない。


03/13/1999
5. 陪審制度と証拠法
アメリカの裁判規則の中に証拠に関するものがあり、どのような証拠を裁判所が採用できるかが厳しく規定されている。例えば、証拠は争われている事項に関係が無ければならないことはもちろんであるが、その他にその証拠が被告又は原告に対する偏見を導くものであってはならない等規定されている。例えば、ある殺人事件について争われているとしよう。この場合、被告の過去の犯罪歴は原則として提出することができない。今現在争われている殺人事件に関係が無く、そのような証拠は被告に対する偏見を導くからである。
ではなぜこのような細かな規則が必要なのであろうか。それは、アメリカの裁判制度が陪審制を採用していることに理由を求めることができよう。裁判官と違って陪審員は、法律の専門家ではなく一般人である。従って、何もかも証拠として提出されたのではどの証拠を採用すべきかの判断ができない。また、殺人事件の裁判を例に取ってみれば、「無罪の被告を誤って殺人者として評決する」危険性に対して相当の抵抗があるであろうが、もし被告が過去に殺人を犯していれば、悪くいえば、「有罪との評決」が気軽にできよう。そのため、アメリカでは、証拠規則によりどのような証拠を裁判所が採用できるかが決められている。提出された証拠を証拠として採用するか否かの判断は裁判官が行うが、もしその証拠が規則に違反するものであった場合は、提出側と反対側の弁護士が採用拒否(Objection)を裁判官に求めなければならない。一般に、争点に関係のある限り裁判官は証拠を採用する傾向にあるので、Objection(一般には「異議あり」と訳されている)を怠ると非常に不利となり、弁護士としての責任(資質)が問われることになる。



03/09/1999
4. 他訴訟の係属に基づく手続の停止(stay)
同じ争点の2つの訴訟があり、一方が上訴中の場合、他の訴訟について手続の停止を求めることができる。例を挙げてみよう。原告が同じ(A)で被告が違う(XとY)2つの訴訟を想定してみよう。Aが特許権を有しており、Aは特許権を侵害されたとしてXとYをそれぞれ訴えたとする。特許訴訟なので連邦地裁に提訴される。AとXの訴訟が先に判決され、地裁ではAが勝訴したとする。そこで、Xは連邦控訴裁(CAFC)に控訴し、現在係属中だとする。もし、争点が事実問題でなく法律問題なら、AとXの訴訟の結果はAとYの訴訟に大きな影響を及ぼすことが容易に考えられる。そこで、Yは地裁に手続の停止を求めることができる。
しかしながら、争点が、その控訴裁が専権管轄を持つものでない場合は、地裁の管轄権の法律にその決定は委ねられるとされており、その場合は停止をする理由がない。例えば、2つの訴訟が違う州の裁判所で行われており、争点が州法に関する場合である。前記の例の場合は、特許権に関することなのでCAFCが専権管轄を持つ。従って手続の停止を求めることができる。手続の停止を認めるか否かは、裁判所の裁量の範囲である。裁判所が考慮する要素は以下の4つが多くの判決の中で示されている。(例えば、Standard Javens Prods. v. Gendor Indus., 897 F2d 511, 512 (Fed Cir 1990)やArkansas Peace Ctr. v. Dep’t of Pollution Control, 992 F2d 145, 147 (8th Cir 1993), cert denied, 511 US 1017 (1994))
(1) 停止を求める者が控訴裁で争われている争点において優位であろうということをかなりの可能性を持って示しているか否か(但し、確実であることを示す必要はない)
(2) 停止を求める者が、停止がなかった場合修復不可能な損害を被るか否か
(3) 停止した場合、他の当事者が実質的な損害を被るか否か、及び
(4) 停止を認めることが公益に沿っているか
以上の要素を考慮の上、裁判所がその裁量の範囲で停止を認めるか否かが判断される。



03/08/1999
3. 通常の判決(Published;公開)と非公開扱い判決(Unpublished Disposition)
アメリカの判決文には、通常の判決文と非公開扱い判決文がある。非公開扱い判決文(といっても、何人も見ることができ、もちろん判決データベースで検索も可能である)とは、その判決を先例として引用されたくない場合に出される。アメリカ法は判例法であり、判決が出されればそれが法律となる。しかしながら、その争点に関してはまだ議論が残されている場合、その裁判管轄域(jurisdiction)においてはまだ先例は無いが他の裁判管轄域を見ると判決が割れている場合、現在上級裁や最高裁で争われている場合や最高裁へ裁量上訴が出されており最高裁が受理し審理する可能性が残されている場合等その判決を先例として引用することが望ましくない場合に非公開扱い判決文が出される。しかしながら、先例(precedent)としての効力(star decisis)は無いが、意見(persuasion)としての効果はある。また、非公開判決は単なる決定の場合(引用する価値の無い場合)にも出される。この場合とは、単に判決を無効として下級審に差し戻す場合等がある。



03/07/1999
2. アメリカの裁判制度-陪審員制度
アメリカの裁判は陪審新制度を採用している。では、何が裁判官によって決定され、何が陪審員によって決定されるのであろうか。簡潔に言えば、法律的事項が裁判官によって決定され、事実事項が陪審によって決定される。例を挙げてみよう。ある契約が、甲と乙の間でなされた。だが実際には、甲が乙を脅迫して契約書にサインした場合を想定してみよう。契約については、一般には州法が適用され、脅迫下(Duressという)で仕方なくなされた場合、その契約は無効とされる。この場合、陪審員が決めるのは、実際に甲が乙を脅迫したかという事実問題である。そして、陪審員が「脅迫があった」と判断した場合、それに基づいて裁判官が法律問題を判断し、その州の法律が脅迫下でなされた契約は無効であると定めていた場合、それを適用して甲乙間の契約を無効とする。だが、場合によっては、事実問題と法律問題が混ざっておりこのようにすっきり行かない場合も多い。



1. Standard of Review(上級裁での審理原則)
上級裁での審理原則には、"de nove," "clearly erroneous standard," "arbitrary and capricious standard"及び"substantial evidence standard" reviews があります。法律問題に関しては"de nove" reviewが適用され、上級裁は下級裁の判断に全くとらわれずに審理が行えます。一方、事実問題に関しては、 "clearly erroneous standard" reviewが適用され、法律の手続や適用に明らかな間違いがあった場合にのみ下級裁の判断を覆せます。どのような間違いが"clearly erroneous standard"に該当するかというと、1)法律の誤った解釈、2)判決がsubstantial evidence(意味のある立証証拠)に支持されていない、3)evidence の重要度の判断ミス(つまり、substantial evidenceではない証拠を誤って採用し誤った判断を下した場合)があります。 "arbitrary and capricious standard"は、agency(政府の外部機関)や下級裁の判断の審理に適用され、恣意的又は合理的でない行為により事実や法律を適用したり無視したりした場合に判断を覆えせます。"substantial evidence standard" reviewは、agencyの決定の審理に用いられ、substantialである立証証拠に基づいてagencyが決定した場合、裁判所はその決定を支持しなければなりません。従って、どの審理原則を採用するかによって上級裁が下級裁又はagencyの判決・決定を覆す場合の困難性が変わってきます。