依存症者との共同生活の中で、最も大切な事は「自分自身の生活を豊かにする事」だと思います。依存症者の飲酒によって自分の心や生活が乱されないように、冷静さを保ち、いつでも心を開いておく事。難しいけれど、とても重要で、またやりがいのある事です。依存症とはどのような病気なのかを知れば、なぜ彼等が無責任な事を言ったりしたりするのか、見えてくる時が来ます。するとイズムの理解も深まり、自分の事をじっくりと観察する事も出来ます。依存症者と家族は、お互いのイズムを反射する鏡だと思いましょう。ですから、自分がイズムを見極める事で、始めてコミュニケーションが成り立ちます。
さて、鏡に映る自分の顔を見た時、眼がしっかりしていて落ち着いた自分を発見したら、依存症者と向き合う準備が出来たと思いましょう。依存症者に、話をする時です。
必ず、お酒を飲んでいない、しらふの時を選びましょう。できればお互いに落ち着いていて、問題やストレスのない時を選びましょう。焦らずに、その時を待つ事です。
依存症とはどういった病気なのかを説明します。病気に関しての正しい知識を率直に伝えます。単純に病気の説明と、「何故私が貴方を依存症だと思うのか」という点を簡単に言いましょう。この時、本人の失敗や体験等を例にして説明しても、本人の気に触る事は言わないように気を付けましょう。本人が否定しても、それに対して反論せず、病院等で貰える冊子や、依存症に関する本など、相手が読みやすいと思われるものを差し出し、もしよかったら読んでみて欲しいと伝えましょう。決して読む事を義務付けないようにしましょう。
依存症者が起こした問題について、率直に伝えましょう。飲酒問題に関して、事実を正確に伝えます。飲酒中の依存症者は物事を正確に覚えていませんので、伝えないでいると「たいした問題じゃない」程度に解釈してしまうからです。大袈裟に話したり、必要のない事(貴方のせいでこんな事になった、この支払いはどうしてくれるの、等の言い回し)は避けます。この時、話をしながら「自分は貴方を責めるつもりでこの話をしているのではない」という心が伝わるように、誠意を持って話します。
自分は助けになりたいのだという事を伝えます。助けになると言っても、実際に出来る事は少ないのですが、お酒の飲み過ぎで健康を害しているので、気を付けて欲しい、飲まない為に何か出来る事があったら言ってくれ、という具合です。なるべく「私」が主語になるよう勤めましょう。
一方的に話すだけではいけないので、相手がどう思うかも聞きながら、「話し合い」になるようにすると、相手も心を開いてくれるかもしれません。もし、相手が平常心を保って話を聞いてくれていると思ったら、お酒を止める気があるかどうか、聞いてみます。「ない」と答えたら、まだその時ではなかったと思って、しばらく見守ることにしましょう。答えないとか、「分らない」とかであれば、本人の中になんらかの葛藤があるのでしょう。これも暖かく見守って、もし何か必要だったら知らせて欲しいと伝えます。また、お酒を止める為に利用出来る自助グループや病院がある事、同じ病気の人も沢山いるのだと言う事も、伝えましょう。
もし、この時、依存症者がお酒を止めたいと答えたのなら、自助グループや病院の事を伝えます。参加する気があるようならば、なるべく早くに本人が足を運ぶようにしましょう。この時も、「行く」と言われた途端に家族がすべての段取りをするなどは、相手に「強制的」な感じを持たせるので、「調べてみる?明日電話、してみようか?」など、相手の同意を尊重するようにしましょう。そして、最も重要な事は、お酒を止める事は辛いかもしれないけど貴方ならきっとできる、止めたいと思っている事は私にとって嬉しい、一緒に頑張ろう、等のポジティブな意見を伝える事です。
上記のような話し合いの中で、少しでも自分の心が乱れたら、感情的になって来たら、怒りが込み上げて来たら、相手をコントロールしようとしている自分に気がついたら、自分のイズムを感じたら、できるだけ早くに話を切り上げます。「ちょっと興奮してきちゃったから、この話はまた今度にしよう。」という感じで、必要に応じて「感情的になってごめんなさい」「聞いてくれてありがとう」等の言葉も一緒に。
イネイブラー、プロヴォーカーの行為を止めて、イズムを取り去り、これらの話し合いを繰り返す事で、依存症者の中に変化が起きるでしょう。それはいつ訪れるか分らない奇跡的な瞬間であって、依存症者が招くものです。家族はその時まで辛くても、待つ事が大切です。そして、愛情と勇気を持って、回復を願い、自分自身の明るい生活に向かって前進していくだけです。
自分の力で変えられないものは受け入れる事、辛いけど、受け入れれば次のドアが開きます。
自分の力で変えられるものは変えていきましょう。感情や思想は、自分だけのものであり、だからこそ自分で自由に変える事ができるのです。
依存症の家族を持つ人の痛みは、万人に共通
しています。その痛みは一日でも味わった事があれば同じなのです。私達は仲間ですから、悩みや困惑をわかちあい、共に成長していく事が出来ます。次のページ、掲示板はわかちあいを目的とした自由な表現の場所です。もし、現在悩んでいるならどうか、その思いを言葉にしてみて下さい。依存症者から学んだ事や、自分のとっての大切な経験等も、掲示板を見ているすべての人に大きな力を与えます。
苦痛がどんなに大きかろうが、希望と未来への手助けは必ずある。
ユーモアの感覚がよみがえり、笑いがではじめたら、きっと元気が戻って来る。
アール=グローマン