最近、ACという言葉を耳にするようになりました。これはAdult Children(アダルトチルドレン)の頭文字をとったもので、正常に機能していない家庭で育った為に、健康的な精神状態を保つ事なく大人になってしまった人の事をいいます。ACは病気ではありませんので、成長してからもカウンセリングなどを受ける事で克服する事が出来ます。ACは、家族機能が不全であればどのような家庭にもあり得る事ですが、ここではACOA, Adult Children of Alcoholics(アダルトチルドレンオブアルコホリクス)を中心に取り上げたいと思います。

ACOAは、アルコール依存症の親を持ち、家庭内で安心する事なく成長期を過ごした為に、精神的な影響を多く受け、成長した時に正常に機能している家庭や、人間関係に順応する事が難しくなった人の事をいいます。ACOAはアルコール依存症とともに生活する事に慣れていて、更に依存症問題のない生活をした事がない為に、将来自らが依存症になったり、依存症の人を結婚相手に選んでしまったり、その子供に依存症が現れたりする事がよくあります。アルコールに限らず、他のアディクション問題(薬物、賭博、摂食、買い物、セックスなど)が出る事も少なくありません。ACOAは、依存症のいる家庭に育ったら必ずそうなるものではありません。では、どのようにACOAという結果 を避ける事が出来るのでしょうか?現在依存症者と共に生活している人の為に、子供への影響を考えてみたいと思います。

子供は依存症者の行動に困惑しています。そして、家族の対応が共依存であれば、その行動にも困惑し傷付いてしまいます。
例えば… 依存症者が物を壊した時、依存症者が謝る事はなく、家族がその始末をしています。子供は「悪い事をしたのに、悪くない事のように扱う家族」に困惑します。
(この困惑を避ける為にも、家族の共依存をなくしていく事は必然的だと理解出来ます。) ・依存症者が昨日は期限がよく誉めてくれた事なのに、今日は同じ事をしてひどく怒られた、依存症者が酔っているかどうか、機嫌がいいかどうかによって左右される家庭の中で、何が正しい事なのか分らなくなります。・ 酔っている依存症者に、自分には覚えのない事で怒られた、自分にはどうにも出来ない事(生まれなきゃよかったのに、等)で怒られたなど、いわれもない事の原因が自分にあると思い込んでしまいます。 ・そのつもりはないのに依存症者の気に触る事をしたために、依存症者がもっとお酒を飲む事になり、共依存の家族に自分が飲酒の原因だと言われて困惑します。・家に帰ったら喧嘩しているかな、誰もいないのかな、帰りたくないけど帰らないと怒られるなぁ、とどうしたらいいのか分らない状態が続き、困っています。


この困惑が長期に渡ると、子供はその困惑が日常であると判断し、困惑に対しての対応しか出来なくなってしまいます。自分が傷付く事を避ける為に、 状況を察知し、それ相応な対処の仕方を自然に学んでしまうのです。ACOAのタイプは大きく分けて四つ。行動と将来の影響に分けて大凡の情報を書くことにします。

責任を追い込むしっかりタイプ

兄弟のいる子供の中で、年長の子供に多く見られるタイプです。親が喧嘩になるそうな時、それを察知して下の子供を別 室に連れていったリ、親が子供に構わないでいる時には食事やお風呂等の世話をしっかりとします。何か問題が起こると自分がしっかりしていなかったからだと思い、責任感が多く、家庭の機能を管理する役目を自分で背負います。将来、自分がやらなきゃダメだ、と強く思い、自分の事よりも人の事の方が重要に思え、他人の事に気をとられてばかりです。人の世話をする事が自分にとって安心であり、人に依存しやすくなります。 また、必要以上な責任感を自分で解放する事が出来ずに、お酒によってリラックスする方法を見つけると、依存症になりやすい。

何でも自分のせいにする謝りタイプ
心はデリケートで、他人の立場になって物事を考える事に慣れてしまいます。自分が謝れば解決する、自分のせいにすれば他人の痛みを和らげられるなど、すべてが他人中心で、自分の感情は二の次になり、何でも自分の失敗にします。自分のせいにすれば状況が穏やかになって自分が楽になる、とも思っています。社会に出てからも謝り役、お人好しの役割をします。自分の感情に対面 する事よりも人の感情に依存する方が物事が解決する事を知り、自分を表現したり意見を述べたりする事が苦手です。無意識のうちに、何でも人のせいにする依存症の人と結婚したりしますが、イネイブラの行動が身についているので共依存になりやすい。または、自分の感情を表現出来ないストレスをお酒で解決する方法を見つけるケースもあります。

どんな状況にも無反応な溶け込みタイプ
何が起きてもおかしくないし、自分の存在は何の解決にもならないと思い、どんな状況にも対応して流されるままにしています。原因も結果 も関係なく、すべての事に第三者でいるよう勤めます。自分の主張は何の効果もないと知り、はじめから感情を持たないよう意識します。家庭内の事に感心がないばかりか、何でも人任せで物事を自分で判断する事がありません。向上心や回復したいという気持ちもありません。無関心、無感情のまま成長します。しかし、心の中には虚無感を抱えていたりして、後の病魔になる事も。いつも「どうせ自分なんか」と思っているので、飲酒を始めた時にも周りの事は見えませんし、無責任な行動をします。

表現方法が分らない反抗タイプ
世話焼き、謝り、溶け込みのように、状況に対応する方法を見出せなかった子供は、意識的に反抗的な態度をとる事を選びます。主張したい物があるのに、どう表現していいかわからない、自分が行動して問題を起こす事でしか、自己表現が出来ません。飲酒による問題よりも大きな問題を起こし、家族の注目を飲酒問題から自分に向けることによって、本来の飲酒問題を誤魔化す事を選びます。その為に親と同じように飲酒を始めたりもします。


以上の四種類に大きくわけられるACOA、成長期の環境が、大人になってからも依存症、または共依存という結果 を招く原因にもなり得る事が分ります。では、すでに依存症者と子供が共存している方にとって、これらの結果 を避ける方法はあるのでしょうか?

子供に対しても正直に接する事が大切だと思われます。「酔っているから恐い人」「喧嘩している時は外にいよう」という判断だけを与えて、本当の問題がなんなのかが分かたないままにしておくと、子供は自分が何故そのような行動をしているのか、考える事もなければ不思議にも思いません。ただ、依存症者の機嫌やその日の都合によってコロコロと変わる状況を説明するのではなく、たった一つ変わる事のない「依存症という病気」を説明します。何か問題が起きたら、病気が原因である事、そして何が起きているのかを子供に分る範囲で説明するといいようです。

そして、家庭内で安心感を持てるようにしてあげましょう。子供にとって、いつでも帰って来れる、安心してくつろげる場所になるよう心掛けます。子供を含め、家族に一体感が出るよう、また、病気という問題に家族皆で対処しようという意識が伝わるよう、気を付けていると、将来に大きな変化が生まれるかもしれません。

次のページでは依存症者も家族も持っている「依存」という問題について、です。

若者に成長するだけでも沢山の時間がかかる
パブロ=ピカソ


ACOAについて
世代を超えた家族の連鎖を考える