Cinema Sha-verite... vol.13
"THE INSIDER"
November 7, 1999 (Sunday)
Pacific's Crest Theatre, Westwood $5.00
監督:マイケル・マン
出演:アル・パチーノ、ラッセル・クロウ、クリストファー・プラマー
大手のタバコ会社「ブラウン&ウィリアムソン」で研究チームのリーダーとして
実績を重ねてきたウィガンド(クロウ)は、同チームが開発していた付加物質の中に
発ガン性のものがあることを知っていた。そんなある日、ウィガンドは突然解雇される。
丁度同じ頃、CBS(全米TVネットワークのひとつ)が誇るニュース番組「60ミニッツ」の
看板プロデューサー、バーグマン(パチーノ)の元に、あるタバコ会社の社員から匿名で
膨大な資料が入った箱が送られてくる。専門用語で埋められた資料を「解読」するために、
ウィガンドをコンサルタントとして雇おうとするバーグマンだが、ウィガンドはなぜか
消極的な態度を取るばかり。そんな折り、ウィガンドは「ブラウン&ウィリアムソン」の
元上司に呼び出され、社内の機密を漏洩したならば、退社後も引き続き支払われている
健康保険への支払いをストップすると警告。正義感の強いウィガンドはバーグマンに
協力したいものの、ゼンソクで苦しむ娘の治療を中断させるわけにはいかなかった。
バーグマンは持ち前の粘りでウィガンドを説得。全米で知らない人がいないと言われている
アンカーマン、マイク・ウォラス(プラマー)のリードで真実をカメラの前で告白する
ウィガンド。しかし、「ブラウン&ウィリアムソン」は名誉毀損でCBSを告発すると反撃。
CBSの司法課は「法廷に出ればCBSが負け、多大な損失が出る」とバーグマンに警告する。
インタビュービデオの完全放送を主張するバーグマンをよそに、上層部はビデオを大幅に
カットした「検閲版」をオンエアする。
中途半端な形で放送された告発ビデオのせいで、ウィガンドの家庭はバラバラに引き裂かれ、
彼の身にも暗黙の危険が迫り始める。ウィガンドと男の約束をしたバーグマンは
どうにかして真実を公けにすべく水面化で動き始める・・・
これは実際にあった話で、最終的に「60ミニッツ」はインタビュービデオの完全版を
放送し、同時に発表されたウォール・ストリート・ジャーナル誌による告発記事が
引き金になって、全米タバコ業界が全米の50州に2460億ドルもの賠償金を払うまでに
なったわけです。映画はバーグマンとウィガンドのスリリングな駆け引きを中心に、
真実を公けにすることがいかに大変で危険かをじっくりと見せてくれます。
評論家たちの絶賛の嵐の中、鳴り物入りで公開された『ドキュ・ドラマ』なのですが、
「事実」を映画用に「脚色」している点がかなり多く、実名の人物や会社から総スカンを
食らっているのが現在の事実。ヤリ玉に挙げられているタバコ会社などは、自社のHPで
「この映画を観ると、健康を害する可能性があります」などと告知してて、映画ファンとしては
後日談も楽しめて2度オイシイわけです(同社のHPへアクセス。なお、英文のみです。)
その影響か、興収も伸び悩んでいるのも事実(製作費68億ドル。現在までの興収約22億ドル)。
監督のマイケル・マンはとても男っぽい作品を撮る人で、全盛期のウォルター・ヒルから
バタ臭さを取り除いたような作品が多く、僕は結構好きです。全作の「ヒート」などは
シビレるような格好良さでした。マンの作品の主人公の傍には必ず女性が居て、その女性が
作品の良心を象徴している・・・というパターンもいいですね。今回もバーグマンの妻役に
リンゼイ・クラウスが扮していて(ディヴィッド・マメット監督作品 "House
of Games" ['97]必見)、
小さな役ながらもバーグマン役のパチーノをしっかりサポートしています。理想の「女房」像ですな。
僕個人としてはこういう「社会派謎ときスリラー物」が大好きなので、2時間28分という長さも
全然気にならなかったですね。90年代版「大統領の陰謀」という感じですか。脚色がひどいと
いう批判は仕方がないですが、これはあくまでもドラマですし、バーグマンとウィガンドの努力が
タバコ訴訟のきっかけを作ったというのは紛れもない事実。「たかが映画じゃないか」とヒッチコックも
言ってましたよね。
パチーノも良かったけど、ラッセル・クロウは最高(前作「LAコンフィデンシャル」でも好演)。
僕は極端なタバコ嫌いなので(日本から離れているのもタバコ嫌いが理由のひとつ)、こういう映画は
大歓迎です。国全体が煙突と化している日本で是非拡大公開してもらいたい作品です。
(東宝東和配給で、2000年公開予定)